まちのこそだて研究所 gurumi




僕は山々に囲まれた小さな田舎町で生まれ育った。町内では顔馴染みがほとんどで、スーパーに買い物に行けば誰とも会わずに帰ってくることは難しい。もちろん、みんながみんな面識があるわけではないが、どこどこの誰々というのはなんとなくわかる。だから、悪さもほとんどできない。高校の頃、コンビニの前でタバコを吸ってたむろしていたヤンキーの先輩が、町の知らないおじさんにすごい叱られていた光景を見たことがある。(その後、先輩はわざわざ隣町にいってグレていた)一人で勝手に育った気がしているが、町ぐるみで、みんなに見守られて育っていったのだなぁと、今となってはしみじみ思う。
まちのこそだて研究所 gurumi(ぐるみ)さんは、札幌中心部のオフィス街を中心として、働きながらどう子育てをしていくのか、いろいろな方へのインタビューやワークショップ、イベントを開催して、さまざまな研究をしている。ロゴをつくるとなってまず考えたのは、ぐるみ=包み→包み込むイメージだ。しかし、親→子といった一方向のものではなく、子もまた親を包み込んでくれている双方的なものにしたい。子どもだけでなく、親も親として一緒に育っていく、だからお互いがお互いを包み込んでいる。最初は父・母・子の3人が包み込まれている絵だったが、今の時代、いろいろな親の形があるわけで、具体的に誰ということもなく、象徴として「大人⇆子ども」とお互いを包みこむ関係を描いた。そして、この包みこむ形は偶然にもハートの形となっていた。ハートは世界共通の最もわかりやすい愛の記号であり、普段ロゴとしてそのまま使うのは避けているが、こんなにさりげなく自然に出来上がったハートならそのまま活かそうと思った。そして、ロゴタイプとフォントはやさしくもありつつどこか研究所感を出した。
余談だが、町でグレていた先輩は、今では家業を継いで農家となり、しっかり働いているらしい。おじさんの愛で包まれた結果だろうか。